厚生労働省は、来年4月から年金の支給停止制度が導入されるのに合わせ、年金受給を自ら停止した人を表彰し、希望者の氏名を公表する仕組みの導入を検討する考えを示した。高齢富裕層の年金返上を促し、年金財政の悪化を少しでも食い止めたい考え。支給停止制度は、申出により年金の支給を停止することができる制度で、受給を再開することも可能。
確定拠出年金の加入者数が今年7月末時点で206万2,000人(前年同時期比28.3%増)となり、導入企業数は7,298社(前年同時期比48.8%増)となったことが厚生労働省の調べでわかった。企業が従業員のために掛金を支払う「企業型」の加入者数が199万2,000人で、導入企業の約8割は従業員300人未満の中小企業が占めている。2004年に掛金の非課税限度額が拡大されたことが大幅に増加した要因とみられる。
厚生年金への加入義務がある事業所のうち、約3割に相当する約63万〜70万事業所が加入の手続きを行っておらず、これに伴い将来年金を受け取ることができない従業員数が推計で約267万人に上ることが、総務省の調べでわかった。同省は、未加入事業所の総数などを把握していない社会保険庁に対し、実態を正確に把握できる仕組みを構築し、加入促進への取り組みを強化することなどを勧告した。
社会保険庁は、2005度の国民年金保険料の納付率が67.1%(前年度比3.5ポイント増)であったと発表し、同庁が目標としていた69.5%には届かなかったことがわかった。約35万件の不正免除などを取り消したことにより、6月中旬に発表した暫定値(67.8%)から0.7ポイントの下方修正となった。同庁は、2007年度の納付率目標を80%としている。
社会保険庁は、年金加入者からの相談や問い合わせに対応するため、2008年度までに全国3カ所のコールセンターを新設し、運営を民間に委託することを発表した。現在、全国に24カ所ある電話相談業務の拠点を集約するもので、コスト削減・サービス向上を図る。同庁では、厚生年金の年金記録に多数のミスが見つかったことから、今後、加入者からの相談や問い合わせが増加するとみている。
企業年金連合会は、厚生年金基金などの企業年金の資産の運用実績を発表し、2005年度の運用利回りが過去最高(1984年度の調査開始以来)の19.16%となったことがわかった。企業年金の資産の約半分は株式が占めており、国内外における株価の上昇が影響したことによるもの。
公的年金の積立金を、株式や債券などで運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」は、2006年度4〜6月期の年金積立金の運用実績を発表し、2兆32億円の赤字となったことがわかった。5月の国内外における株価下落の影響を大きく受けたもので、2001年度7〜9月期に次ぐ、過去2番目に大きな赤字額となった。
厚生年金基金が、積立不足分を分割返上することなどを条件に解散が認められる「特例解散制度」を利用した件数は、制度初年度の2005年度は5件しかなかったことがわかった。厚生労働省は、財政難の基金を中心に利用が多くなるとみていたが、景気の回復・株価の上昇などにより、財政状況が改善して特例制度を利用する必要がなくなった基金が増加したとみられる。
厚生年金の支給額算出のベースとなる加入日・月給などの会社員の年金記録について、年間25万〜30万件の記録訂正があることが、社保庁の調べで判明した。ミスの原因は、会社が提出したデータの誤りか社保庁による入力ミス。ミスに気付かずに放置されたままの記録も多いと思われ、社保庁は記録についての相談を強化するとしている。
社会保険庁は、国民年金保険料の不正免除問題で、不正な事務処理に
関った職員と上司ら計1,752人(社保庁職員の1割に相当)の処分を発表
した。村瀬社保庁長官については監督責任を問い、川崎厚労相による
訓告とした。また、社保庁改革の一環として、社会保険事務所長を民間
企業経験者から公募することも併せて発表した。
政府は、パート労働者への厚生年金の適用拡大に関する厚生労働省の
試算を発表した。これによると、サラリーマンの妻(41歳)が月8万
円の賃金で20年働いた場合、保険料負担が月額で約5,700〜7,300円新
たに加わるが、年金受給額は約8,600円増加する。自営業者の妻となる
と、自己負担している保険料(国民年金)が折半となるうえに受給額
が増えることにもなる。政府は早ければ2009年の実施を目指すが、経
済界からの反発は厳しい。
なお、現在のパート労働者数は約1,266万人(2005年)。
企業年金連合会は、10月より「通算企業年金」の予定利率を現行の0.5%
から1.75ポイント引き上げ、2.25%にする方針を決定。日銀のゼロ金利
政策解除などを受けた措置で、加入者が約7,500人と低迷している中、
制度の周知を徹底し加入者の拡大を図る。通算年金は、確定給付企業年
金や厚生年金基金の脱退者らの積立金の受け皿として昨年10月に発足した。
厚年基金などがある企業に再就職した際には積立金を引き継ぐこともできる。
企業年金連合会(2005年10月に厚生年金基金連合会から名称変更)は、2005年度の決算結果を発表。国内外の株式運用が好調だったことなどから、資産運用利回りが過去最高の22.7%となったことがわかった。その結果、約1兆8,000億円の剰余金が発生し、2004年度末時点での積立不足(約5,400億円)が解消され、積立超過が約1兆3,000億円となった。
社保庁は、現在、加入者が国民年金保険料の納付記録の訂正を申請す
る場合に必要としている保険料の領収書について、今後はこれを不要とし、
預金通帳や企業在職記録などの納付状況がわかる資料があれば申請
できるようにする方針を示した。年金保険料の納付をめぐって加入者から
苦情が出ていることを受けて対応したもの。
厚労省は、2007年4月にスタートする離婚時等の年金分割制度において、
企業が運営する厚生年金基金が国の厚生年金に一部代行して運用・給付
を行っている「代行部分」についても、分割の対象とする方針を示した。
社保庁が厚生年金基金から年金の支給原資となる資産を徴収し、離婚し
た配偶者に直接年金を支給することになる。